tama-medical.com   2003年4月27日更新

以下は青木文彦先生が2003年4月、第46回日本形成外科学会学術集会(神戸市)にて口演発表した内容を、著者の承諾を得て掲載しています。
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超弾性ワイヤーによる爪矯正法(第2報)―種々の変形に対する矯正―

湘南台青木形成外科クリニック 青木文彦

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昨年演者は町田が開発した超弾性ワイヤーを用いた爪矯正法の利点、欠点などを報告した。その後さらに症例を重ね、当院での爪矯正症例、男性149例、女性464例の計613例、1,037趾のなかで様々な爪変形に対する爪矯正を経験することができた。

これにより単純な矯正法だけでなく種々のバリエーションを加えた矯正をおこなってみたところ、かなり適応範囲を広げることができたので、代表的な症例を供覧しながらその方法を報告する。


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今回報告する爪変形はスライドの如くである。標準的な巻き爪の他に厚く硬い巻き爪、爪床を巻き込み上方へ伸びる巻き爪、いわゆるピンサーネイルやトランペット型といわれる強度の巻き爪、さらに片側型の巻き爪、爪白癬による変形、スリーウォールタイプを含む狭義の陥入爪、無症状の整容的矯正などである。なお厚硬爪甲や爪甲鉤弯症は適応から除外した。


image004s.jpg 矯正用ワイヤーは現在0.35mm,0.4mm,05mm,0.55mmの4種類がありそれぞれ爪の硬さにより使い分け、スライドの如くワイヤー2本を用いた爪甲横断多重標準装着,片側斜装着、爪甲横断標準装着と片側斜装着を組み合わせた混合装着、さらに3本を組み合わせた混合装着などといった種々の組み合わせが可能となる。


image005s.jpg image006s.jpg 代表例を供覧する。片側の巻き込みがやや強い爪である、まず片側標準装着により爪を対象形に開いた後、爪甲横断標準装着を追加して均等に広げた。


image007s.jpg image008s.jpg 先端が「の」の字を描いた痛みの強い重度の巻き爪である。まずは爪甲横断標準装着により爪幅を広げ、その後厚くて硬く弯局の強い側に片側斜装着を組み合わせた。若年の弾力性のある爪であるため、簡単に平坦化するが,矯正を中止すると短期間で後戻りする。これらのように片側の巻き込みが強い例では、主に内側の巻き込みが強く、厚みもあるため均等に広げるには片側の多重装着を要することがある。


image009s.jpg しかしこのように爪白癬を合併していて、脆いため多重装着では爪が割れてしまうような場合は、スライドのように1本の爪甲横断装着で、少しづつワイヤー装着の位置を変えていくと均等に広げることができる。


image010s.jpg image011s.jpg スライドは巻き込みの程度は標準的であるが、厚く硬いため1本の爪甲横断標準装着ではわずかに広がるのみであった。これだけでも痛みの改善には充分有効であるが、より圧迫にも耐え得る程度まで広げるために、爪甲表面をルーターで剥削して薄くした後、爪甲横断多重標準装着とした。これにより均等かつ充分に平坦化した。


image012s.jpg image013s.jpg スライドは爪床を巻き込み上方へ伸びる巻き爪でingrownによる肉芽形成を伴っていた。このような例に対し、爪矯正のみでも充分改善可能であるが、痛みの改善をより早めるために、まず局麻下にingrown部分を切除、このように痛みと炎症が改善した時点で矯正を開始した。巻き込まれていた爪床は平坦化し、上方に向かっていた爪も通常の前方方向に伸びてきた。


image014s.jpg 爪下角質増殖が著しく、爪の原型をとどめていないような爪白癬の例である。爪甲横断標準装着により爪を広げると爪下角質が崩れてくる。このとき白癬で爪が脆くなっていると、ワイヤーの弾力性で爪そのものも崩れてくるので注意を要する。爪下スペースが露出するためか、本来抗真菌薬外用のみではあまり改善を認めないような例でもスライドの如く爪下角質増殖の改善を認めた。


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いわゆる陥入爪であり、爪幅が広く巻き込みはあまり強くない。まずは局麻下にingrownしている部分を切除、通常これで痛みと炎症の改善は見込めるが、その後爪が伸びてくるにしたがい同様のingrownが生じる。ここで爪甲横断装着により側爪縁を挙上しつつコットンパッキングを併用してingrownを防ぐ。さらに側爪縁最深部を挙上するため爪甲横断斜装着を加えながら最深部を側爪郭より脱出させる。これにより爪甲幅いっぱいの遊離縁が露出し、側爪郭へのingrownがなくなった。しかしながらこのような症例では、幅広い爪基部が外下方への圧迫から側方への圧迫に変化して痛みを生じる場合がある。このような例の場合通常矯正を終了すると爪基部の弯局も本来の位置に戻るが、スライドの如く爪幅が非常に広い場合は側爪縁の圧迫が再発しやすく、爪矯正のみでは対処できず手術を選択せざるを得ないことがある。


image018s.jpg image019.jpg スライドは痛みなどの症状はなく、細い爪に対する整容的改善を目的として爪矯正を行った。若年の弾力性のある爪であるため容易に平坦化するが、矯正を中止すると短期間で後戻りした。目的が痛みなどの改善ではないため、後戻りした後はその治療意義を失う。 まとめ:本法はワイヤーの単純な装着だけでなく、種々の装着法を組み合わせることにより様々な爪変形に対応可能である。ごく一部の陥入爪において本法での治療が困難な場合がある。形状の後戻り率は比較的高く、爪形態の根治的改善というよりも痛みや炎症の改善ということに目標を絞れば本法の適応範囲は広い。


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